子供がいじめや嫌な思いを乗り越える時、絵本が力になる時もある。
さらには大人まで思わず考えさせられてしまうことも。
そんな魅力がヨシタケシンスケさんの絵本にはあります。
今回はヨシタケシンスケさんの絵本の中から、子供はもちろん、大人も色々と考えさせられる絵本を新作まで含めて厳選しました。
小学生から大人までは3冊すべておすすめです。そしてママパパ自身も考えらせられたり、ちょっとだけ気持ちがラクになることも。
ヨシタケシンスケ絵本ワールドを今回もどこにもないマニアックな深読みレビューでご紹介します。(注意:多少ネタバレがあります。)
ヨシタケシンスケ絵本おすすめ1.|「ころべばいいのに」
「ころべばいいのに」は嫌いな人がいることを認めてくれる
「わたしにはきらいなひとがいる。なんにんかいる」ていうちょっと衝撃的な言葉で始まるヨシタケシンスケ絵本「ころべばいいのに」。
初めて読んでドキッとしたママも多いのでは。幼稚園や学校では「みんなで仲良くしましょう」「人を嫌いとか言っちゃだめだよ」と教えられてきますよね。
でも、意地悪をされたり、ひどいことを言われたら...
大人だって気分を害したりするはず。子供も同じでは。
ヨシタケシンスケ絵本「ころべばいいのに」では「誰かを嫌い」と思ってしまう子供の正直な気持ちをそのまま受け止めてくれます。
「嫌なものは嫌」
「嫌い人を無理に好きにならなくていい」
そんなメッセージを発してくれる絵本って実はあまり多くないですよね。
正直な子供の気持ちをそのまま受け止めるヨシタケシンスケ絵本「ころべばいいのに」。
子供の本音にそっと寄り添ってくれるところがとてもおすすめです。
「ころべばいいのに」は視点を変えることを体験できる
嫌なことがあった時、自分の気持ちばかりが膨らんでしまったり、相手の嫌なことだけ目についたりしがち。
つまり、「自分の視点」からしか物事を見れなくなる時がありますよね。
でもヨシタケシンスケ絵本「ころべばいいのに」で主人公の女の子は「いろいろな視点から嫌な思いについて考察する」ことを繰り返します。
たとえば、
「大人だって嫌いな人はいる」
「ほかにも嫌な思いしている人がいる」
「嫌な人は実はこんな状況では」など
主人公の女の子は、周りの人や相手に目を向けることで「自分一人だけが辛いわけじゃないんだ」と客観的な視点で「嫌な気持ち」について考えます。
普段子供ってこんな風に冷静に客観的に自分を見る練習をしてこないからなかなかできないことが多いです。大人でも自分のつらい状況にだけ目が行ってしまうと抜け出しにくくち。
ヨシタケシンスケ絵本「ころべばいいのに」はそんな視点を変えることを体験させてくれます。
「ころべばいいのに」は嫌な気分をやり過ごすヒントがいっぱい
このヨシタケシンスケ絵本「ころべばいいのに」では主人公の女の子は「嫌な気分」をなかったことにするのではなく、正面から向き合います。
そして「やり過ごす方法」をあれこれ考えます。
そして、主人公の女の子は最終的に「自分の嫌な気持ちに『折り合いをつける』」ことを自ら学び取ります。
親、先生など誰かが間に入って意地悪な子をしかったり、嫌な思いをしてる子を助けることは多少できます。
でもいつも誰かが助けてくれるとは限らない。
だれもが「自分の嫌な思いを自力でなんとかしなければならない」場面に直面する時がきます。
主人公の女の子は子供なりにいろいろ考えます。
「嫌な気持ちの原因」
「意地悪な子がなぜそんなことをするのか」
「嫌な気持ちを紛らわす方法」
思わずクスッと笑ってしまう子供らしい妄想から、大人でも「なるほど!」っと思ってしまうヒントまでたくさん。
きっと大人も子供も「自分の心を本当の意味で立て直せるのは自分自身」かもしれない。そんなことが子供にも伝わるおすすめの絵本。
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ヨシタケシンスケ絵本おすすめ2.|「なんだろうなんだろう」
「なんだろうなんだろう」は抽象的、哲学的なテーマに触れる絵本
光村図書から小学校の道徳に教科書化された内容を含む絵本。
「なんだろう」を徹底追究! 12のテーマ
がっこう / たのしい / うそ / 友だち / しあわせ / 自分 / 正義 / ゆるす / 自立 / 立場 / ふつう / 夢
(出典:光村図書ホームページ)
普段深く考えずに過ごしている日常で、子供たちにそれぞれのテーマについて触れる機会を与えてる点がおすすめできるポイント。
親は子供に学校や友達関係など心配でつい余計な質問をしちゃったりしますよね。
「どう?」って聞かれても子供は「まあまあ」みたいになんとなく答えるしかないですよね。
こういう普段なにげなく使っている言葉や概念について、深く考えてみると意外な発見があるかもしれません。
ひとつのテーマだけで2時間くらいクラスのみんなで話し合いが出来そうなヨシタケシンスケ絵本「なんだろうなんだろう」。
学校の授業でみんなで意見を出し合うのもいいし、親子で時にはこんなテーマで話し合うと本音がぽろっとでたりするのでおすすめです。
「なんだろうなんだろう」は普段の常識が間違っているかもと思考するきっかけに
ヨシタケシンスケさんは子供達自身に「自力で判断させる狙いがある」とおっしゃってます。
つまり、「これが正解!」っていう明確な答えがあるわけでじゃなく、大事なのは「自分の頭で考える」こと。
普段常識だと思っていたことがそうではなかったり、大人も矛盾が多かったり、正解がなくても「思考する」いいきっかけになる絵本としてとてもおすすめです。
まずは「うそ」について。
「嘘をついてはいけません」って学校も親も子供に散々言ってますよね。もちろん基本的にこれば正解なはず。でも優しいウソ、便利なウソもだめなんだろうかと鋭いところをついてきます。
例えば
「はやくねないとオニがくるよ!」とおどす。苦笑するパパママも多いのでは((笑)
ヨシタケシンスケ絵本「なんだろうなんだろう」にはそんなふうに大人の痛いところにもさらっとツッコミを入れてくれるところが、ほかの絵本にはあまり見ないおすすめポイントのひとつ。^^大人も考えさせられます。((笑)
ヨシタケシンスケ絵本おすすめ3.|「もしものせかい」
「もしものせかい」は喪失感にうなだれる人に寄り添ってくれる
ヨシタケシンスケ絵本にしては短めの「もしものせかい」。その短めなストーリーの中に、「大事なものを失った人」の切なさにずっと寄り添ってくれます。
『失ったものは「今のあなたのいるせかい」から「もしものせかい」に移動しただけなんだよ。』という1つの考え方で。
この考え方にどれだけの人が救われるだろうか。
何かを失くして人が辛いと感じるのは「二度と自分のもとに戻ってこないから。」
戻ってこないことに変わりはないんだけど、「今自分の手元にないだけで、別の場所に移動して存在している」
そんな妄想みたいな考え方でも、気持ちが少し救われる人がいるのでは。失ったものをずっと悲しみながら生きていくのは辛すぎる。ちょっとした考え方で楽にもなれるならいいと思う。
ヨシタケシンスケ絵本「もしものせかい」は「喪失感」からなかなか抜け出せない人がほんの少し気持ちを軽くできるエッセンスがある。
「もしものせかい」は自責の念を持つ人を癒してくれる
何かを失った時、「自分のせいだ」って感じて自分を責めたことってないですか。
自分がもっと気を付けていれば
じぶんがちょっと注意していれば
大事なものを失なわなかったのでは
と。
誰もがヨシタケシンスケ絵本「もしものせかい」ではどこかさりげなく救いの手を差し伸べられている。
この「もしものせかい」では、子供も大人も不注意や、自分ではどうしようもなかったことで「何かを失った」人がずっと引きずる「自責の念」を癒してくれる。
あのとき「もし自分がこうしていれば失わずに済んだかもしれない」
「自分のせいでこうなったのではないか。」
そんな風に自分を責めてしまう大人や子供に「そうなったのは理由なんて特にないんだよ」と押し付けるでも諭すでもなくふわっと示してくれる。
つまり、「きみのせいじゃないよ」って。
絵本「もしのもせかい」では、今の世界と別の世界が同時に存在する。
だから、失ってしまったものやなくしてしまった大事な人といつかまた会えるかもしれないとさえ感じてしまう。
そんな優しいセラピーのような雰囲気がヨシタケシンスケ絵本「もしのもせかい」には存在する。